QBハウス革命(レボリューション)

20代で初めてQBハウスという安さがウリのチェーンの床屋さんに行った

 

店の前を通り過ぎたことは何回もあるが自分は髪を切ってもらうところは美容室だと決めていたため入ったことはなかった

というか入るものじゃないとまで思っていた

 

なにせ俺の髪は太くて硬くて癖があって量が多い

多分おじいちゃんから隔世遺伝していることによるものだ

 

 

ここで俺の美容室人生を振り返る

 

高校の時通っていた美容室では癖があるけど良い癖だからそれを活かしていこう!

と言われた、最初は良い癖という響きがなんか嬉しかったが

 

長野で働いていたときに通っていた美容室でも全く同じことを言われ、癖毛の人はとりあえずそう言っておけば良い的な一種の社交辞令というかフォローというかそういう類のリップサービスだという事に気がついててとても悲しい気持ちになった

 

大学時代に通っていた美容室でも初めて行ったとき

こりゃハサミが可哀想だわ

と苦笑い混じりに言われてから完全に自分の髪はコンプレックスになっていた

学生とはいえ仮にも客に対してそんなこと言っていいのかという疑問と悔しさはありつつもたらはたらたさまりたらたやたなたはたらま、ま。はほまらまさちろ

 

……

 

とにかく俺の髪を扱うのには技術が必要らしいことを悟った

 

それからというものホットペッパーで暦10年以上の美容師のプロフィールをめちゃくちゃ真剣に精査して良さそうなところに予約して通っていた

 

安いところは雑にこなされるんじゃないかと思っていたのと、シャンプーや顔剃りのサービスがないにしても安すぎて怖いのと、指名ができないのと、中学生くらいの時に一回地元の1500円カットの床屋に行って失敗した経験があり

なにより正直技術的に不安が拭えなかった

 

だから髪を切ってもらうのは絶対美容室じゃなきゃダメだと思っていた

 

それに安い床屋の客は中年男性からお年寄りの方が多く、若い男性が入っているのを見たことがなかったため単純に入りにくかったというのもある

 

しかしもう髪を3ヶ月切っておらず毛量が多く頭が重いし癖毛が見苦しくて正直限界だったのと大宮まで行くのが本当にめんどくさかったし

 

正直今は働いてないから失敗されても誰も自分の髪型を見る人はいないし髪が短くなればそれでオッケーという状況に陥り勇気を振り絞ってQBハウスに行ってみるという結論が導かれた

 

開店は午前10時

ネットで調べた

10時2分に行ったら3席あるカットの席は全部埋まっていてしかも自分の前に3人並んでいた

本当にびっくりした

知らない世界はまだまだあるものだ

 

並んで待っていたら10分ほどで自分の番が回ってきた

待ち時間の間にも自分の後ろには5人くらい並んでいた

 

やはりお客さんは40代から60代くらいのおじさんが主だったが、一人は60代くらいの女性がいた

 

少し緊張していた

美容師は男性だと思っていたら女性だった

「2センチ切って軽くして耳は出してください」

ハサミを入れられた瞬間から目を閉じていた

怖かったから

それにちょっと眠かったから

失敗されたあの時のトラウマが蘇る

 

だいぶハサミが静かになったところで

恐る恐る目を開けてみる

 

むしろいつもの美容室よりも良い仕上がりだった

 

美容師さんに手鏡で後ろ頭の仕上がりも見せてもらう

このくらいでよろしいでしょうか?

よろしすぎた

これ以上にない出来だった

心からありがとうございますという顔で

心からありがとうございますと言った

 

 

今までの俺の美容室人生ってなんだったんだろうと思った

まじで

これが20代後半のレボリューション

 

心躍った

その日は夜が明けるまで踊り明かしたのだった